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図工のどうしよう?を考えるブログ

ほって すって(版画)【中学年 絵】

授業

はじめて使う“彫刻刀

木の板に刃を当てて、力を込めると、サクッという音と共に、心地いい手ごたえが伝わってくる。刃を当てる角度、力の込め具合や力の方向をコントロールしながらどんどんと彫り進める。

いつの間にか、教室には木を彫る音だけ

「ああ~ つかれたっ!」

授業の終わり、集中していた子どもたちは笑顔で言います。

とても楽しい版画の授業

でも気をつけなければ、大人にとっても、子どもにとってもつらい授業になる危険も!

今回、子どもたちははじめて彫刻刀を使ってはじめて一版単色版画をします。子どもの自らの工夫や彫りながら立ち上がってくるイメージを大切にした授業です。

つらくなる版画の授業って?(問題点)

まずは、通常の一版単色版画の進め方を整理しましょう。

ざっくりいうと

  1. 下絵を描く
  2. 下絵を板に転写する
  3. 彫る
  4. 刷る

という感じです。

まとめてみると、

きこにあ
きこにあ

えっ!? これだけ?

と感じてしまいますが、これの一つ一つにたくさんの決まりや注意する点があって大変なんです!

私もたくさん失敗したので、苦い記憶を思い出しながらまとめてみます。

下絵を描く

まずはテーマを決めます。 自画像やら浮世絵の模写やら昆虫やら風景やら、、、

だいたい、センセイが決めることが多いですね。

子どもの頭に、なんでそれ描かないとダメなの?という疑問が浮かばないテーマ設定にしたいですね。

 下絵を描くときにも、工夫が必要。えんぴつで描いた後に太いペンでなぞらせたり、彫らないところを塗りつぶさせたりします。すべて、彫る時に失敗しないようにするための指導の工夫ですが、子どもには、なんで?と思わせていたかもしれません。

下絵を板に転写する

一般的には、カーボン紙を使って転写します。

でもまあ、ずれるずれる!どこをなぞったかわからなくなるし!!現場は大混乱です。

ペンで太い線になっているので、線の内側と外側どちらもなぞらないといけないし、、、子どもはどの線が彫るために必要なのか判断できないんだと痛感しました。だって、はじめてですもんね、、、

彫る

それができたら、やっと彫るというステージに上がれます。パチパチ!

ただし、彫り方の指導もいろんな種類が、、、どの彫刻刀を使うのか、から始まって彫り方の手順があるんです。下絵の線のアウトラインを三角刀(切り出し刀)で彫って、内側を丸刀(平刀)で彫りぬく。とか  彫る時は、彫り跡を意識して彫る方向をそろえる。とか いろいろ、、、

 でもまあ、子どもは彫ったらダメなところも彫るし、彫りすぎて穴をあけちゃうし、、、

こちらが「ああ!ちがうちがう!!」と言っちゃうこともたくさんありました。

あと、「まだここ、彫れてないよ!」と彫り直しを指示して、嫌な顔をされることもしばしば、、、

刷る

ここにきて、また新しいことを教えなければなりません!インクのつけ方、つけるときの注意、版画用紙の乗せ方、バレンでのこすり方、刷った後の版木の掃除のしかた、、、

盛りだくさんです。インクトレーにインクを足したり、トレーに入った木くずを取り除いたりと、私も子どもが刷るところに付きっきりで、忙しい~。その間、他の子はほったらかしでした。

問題点まとめ

一番の問題点は、子どもの中に版画の手順と完成のイメージがないこと。なので、こっちが失敗しないように工夫した指導でも、子どもには、なんで??ということが多いです。そうすると、自分事になっていないので子どもには伝わりません。

ただでさえ教えることの多い版画の指導、頭がパンクしちゃいますよね。

そこで、子どもの“はじめて”の感覚によりそって、子どもが納得しながら工夫できる授業計画を考えました。

活動の流れ

大人が従来の版画を教え込むんじゃなくて、

子どもが版画を楽しみながら何ができるか考える授業をめざします。

1回目

版木を配った後は、裏面を使ってはじめての彫刻刀を楽しみます。まずは彫刻刀の持ち方や彫り方の説明をします。(彫刻刀を持ってない方の手の親指を、彫刻刀のおしりに添える方法を子どもに勧めています。けが人がほとんどいなくなります。)

こんな感じ

はじめは子ども1人1人を見て回って、一緒に彫って、体の動かし方を伝えます。

まずは丸刀を使いますが、慣れてきたら他の彫刻刀を使う時間です。丸刀、小丸刀、三角刀、平刀の4本。(切り出し刀は1本だけ使い方が違うので、今回は使いません。)

そのうちに子どもたちは

「おれは、三角刀が好き~」

「平刀、意外と楽しい。」

「やっぱり丸刀いいな!」

と、彫刻刀の特徴に気付いていきます。

そしてここからが、この時間の一番のポイント

紙に刷ります!

どら太
どら太

えっ!?何を???

そうです。 今、練習していた板にインクをつけるのです。

実は、子どもは彫刻刀で板を彫ることに真剣に向き合っているので、子どもにとっては板が作品なのです!

だから、こんな表現も出てきます。

ここで刷る方法を教えると共に、刷った紙の方が作品だよ~と伝えるのです。(さっきまでの練習で、必ず文字を彫る子がいるので、刷ると反転することも一緒におさえます。)

数人ずつ呼んで刷りにチャレンジ。

紙をめくる瞬間はやっぱりドキドキですね!

この時は刷り場にいて、だいたいのインクの量を子どもたちに伝えていきます。もちろん、自分でインクの量をコントロールできるようになってほしいからです。

あと、見当(紙を正確に置くためのヤーツ)は使用しません。版画のプロを育てたいわけじゃないので!

全員刷り終わったら、1回目の2時間が終了です。

2回目

今回からいよいよ作品づくりに入ります。

目標は

きこにあ
きこにあ

彫刻刀の特徴を生かしながら、思いついたことを表そう。

つまり、彫りながら考えてねということ。

さらば、下絵指導の苦しみ!!

もちろん下絵が描きたい子はそれでOK(その子は板に直接えんぴつで描いてました。)

図鑑を見ながら

クラスで考えの共有はしましたが、とりあえず子どもたちを信じて任せます。

自由にしてほんとに大丈夫かな??

子どもは表したいことを見つけられるかな??

と心配していましたが、結果ほとんどの子が自分の表現を見つけていました。

みくびってすみません、、、、

あと、刷りたいときにいつでも刷れるように場は設定しておきます。

刷りたい放題です。

子どもたちは彫って刷ってを繰り返しながら、自分の表現を追及していきました。

3回目

今回は、前回の続きです。

ただ、ちがう点が1つあります。

黒い紙と白いインクが用意されていることです。

やっぱり子どもの感覚として、“線を彫る”のが感覚的に自然で“線を彫り残す”ことはあまり考えません。(篆刻で言うと白文と朱文ですね。)

だったら、紙とインクの色を反転させてもいいんじゃない?ということで用意したものです。もちろんどちらにするか選ぶのは子どもです!

4回目(終わり)

今回は鑑賞会もするので、彫りはちょっとで刷りの時間を1時間だけとりました。

子どもたちは、どれを作品とするか相談しながら選んでいました。

前に刷ったものも残していたので、ひとつ前のものを選ぶ子もいます。

どら太
どら太

2枚をつなげて作品にしてもいいですか??

という子もいました。

作品を構成しようとしていてすごいなぁ

ということで、作品の完成となります。

完成作品

船から見た花火
きれいな星と木
とびうおジャンプ
うつし鏡
りゅうとカミナリ

評価規準や準備に関して

評価規準

知・技 彫刻刀で彫る感覚や行為を通して、形の感じや形の組み合わせが分かり、版画の用具を使い、表し方を工夫する。

思・判・表 彫刻刀で板を彫って感じたことを基に、イメージを持ちながら表したいことを考えたり、自他の作品から見方や感じ方を広げたりする。

 彫ったり刷ったりを繰り返しながら版に表す学習活動に進んで取り組む。

準備

・版画用インキ 黒と白 1クラス2本ずつあれば十分 

  ※水性って書いてるやつでも油が入ってます!なぜ?洗うときはせっけんで

・版画用紙 白と黒 白は1人4枚くらい 黒は1人2枚くらい

・作業板 or すべり止めマット

・練り板(インクトレー) はじめは黒色4つ のちに黒白2つずつ用意

・ローラー 

・バレン

 ※バランはお弁当に入ってるやつか、ダイのお父さんです。

・ぞうきん たくさん

 ※汚れもの用のちっちゃい洗濯機を買ってもらったので、それで洗うと楽!

まとめ

とにかく教えることが多い版画の指導。と、それについていけない子どもたち。どちらもつらい思いをすることも、、、教える場面を少なくして、子どもの自由を増やそうと思って、知り合いの実践をもとに考えたものです。はじめての彫刻刀と版画の体験、大人にとっても子どもにとっても楽しい時間になりました。

版画の細かいコツも、また今度まとめてみますね。

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